タクシーは窓開けより外気入れたエアコンが効果的 「富岳」分析
理化学研究所が運用するスーパーコンピューター「富岳」を使った新型コロナウイルスの飛沫(ひまつ)の広がり方のシミュレーション成果が26日公表され、タクシーの車内や航空機の機内ではマスクの着用や換気が重要であることが改めて示された。他人と密室で過ごすリスクをどうやって減らしていくかヒントとなりそうだ。
理研チームリーダーで神戸大教授の坪倉誠氏らの研究チームは日本航空などと共同で、航空機の客席でマスクをせずにせきをした場合の飛沫の飛び方を分析した。通常の姿勢でせきをした場合、前方の席にぶつかって多くの飛沫が広がらずに落ちるのに対し、席をリクライニングさせた状態でせきをすると、飛沫が上方に吹き上がり、周囲のシートや乗客に降りかかることがシミュレーションで分かった。一方、マスクを着用すると飛沫量は3分の1ほどに抑えられるため、感染リスク低減が期待できる。
研究チームはまた、タクシーの車内の換気がエアコンや窓の開閉によってどのように進むかも調べた。
外気を入れる設定のエアコンを使用すると、窓を閉めていても1分半ほどで空気が入れ替わることが分かった。時速40キロで走行中に窓を開けると換気量は25%ほど増えるが、時速20キロではほとんど効果がないことが分かった。坪倉氏は「空気をかき混ぜる効果が窓の近くでしかない。無理に窓を開けずエアコンをしっかりつければ十分だ」と話した。エアコンは空気を循環するモードでは換気されないので、外気を取り込む設定になっていることを確認してほしいとしている。
また、パーティションがある運転席でせきをした場合、横の窓が開いていると効果的に飛沫が外に排出され、後部座席の感染リスクが減ることが分かった。マスクをすればそもそもの飛沫量が減るので、運転者も乗客も着用する効果は大きいとも指摘した。